何でもいいから面白い本を勧めろという人と、このぐらい読んでおけって本を並べる人

唐突ですが、「何でもいいからオススメの本教えて」という質問は困ります。面白さは人それぞれ、好みによって千差万別、だからです。しかも薦め方も難しい。特に私はミステリィばっかり読むような偏った読書癖を持っているので、どこをどうしたらネタばらしせずに魅力を伝えられるのか、それを考えるだけで一日掛かりそう、ってなもんです。
それに、薦めた後「私はちょっと好みじゃなかったなぁ」なんて感想を聞かれると無駄にへこみますからね。予想通りではあるけれど、自分が面白いと思っていた本だからショックを受けるわけです。
そう言うわけで、私は本を薦めるのがとても苦手だし、上記以外の理由も含めて嫌いです。


でも、世の中には本を薦めるのが好きで、得意だと言う人が居ます。促進販売目的の出版社や書店は別として、です。そういう人達がいるから、口コミで本が売れるのだろうし話題にもなるのだろうなと思う反面、どうも気になる事があります。
「〜なら原点である○○は読んでしかるべきだし、歴史に沿って△△も読んでおけば言う事はない」という論調です。ミステリィで言うなら「密室好きを自負するなら、ポーの『モルグ街の悪夢』を読んでおくのはごく常識の範囲で、カーの作品についても触れなくちゃならない」みたいな事です。
勿論、物事を語る上で歴史や経緯を知っておく事は必要だし、そうした事を踏まえて本を読めば理解が深まるのも事実です。でもそれはあくまで、個人の好みであって、ミステリィ研究者でもない限り、密室が好きでもカーは読んだ事がない、館物好きだけれど綾辻は読まない、という人がいたって勝手なわけです。でもそうした人たちは、系統立てて読まない人たちに「読んでおくべき」「読みもしないで好きだなどというのは浅くて困る」と言わんばかりです。その一方で、読書って自由にするものだ、てな主張もしていたりします。矛盾、とまではいかないけれどどうもこの二つって、同時に存在するのは居心地悪い感じがするのです。
それとも、照れ隠しに命令口調(あるいは押し付け)なだけで、本当は「これ読むと面白いんだよ、そうすると楽しいんだよー」って親切心なんでしょうか。偉そうなのは癖、みたいな。もしくは映画に出てくる格闘家の様に「このレベルまでこなければ、俺は貴様など相手にしない(からレベル上げてもっかい来てよね、頼むよ)」って事なのか。