綾辻行人と有栖川有栖のミステリ・ジョッキーに夢中です

初めて読む作家とか、短編ばかりですごい面白いです。名前は知っているけれど、手を出すに至ってなかった作家とか。
以下ネタばらし含んでます。



『恐怖』竹本健治
ホラーとミステリーが近いジャンルなのは分かっていても、ホラーが苦手であまり読めないんですが、こういうテイストは割と好きみたいです。『赤い部屋』もそうだけれど、理屈で怖い、というのが好きみたいです。話として面白く読めた、と思えます。で、『親指の技師』なんかは、そうではない怖さで、それが小学生の頃に残っていたなぁ、と思い出しました。


『開いた窓』『踊る細胞』江坂遊
ショートショートというと、星新一か、星新一セレクションぐらいしかあまり読んだ事はないんですがはまると面白いですよね。オチですとん、と納得がいくとすごく面白くて、たとえばこの二つなら『開いた窓』がそういう話。どうしてもそういう話ばかり求めてしまうんですが、『踊る細胞』みたいに、読んだ後で色々考える話も実は面白い、と気付けるようになったのは最近で、それも星新一の作品を読み返すようになってからでした。
別の作品の感想で綾辻氏が言っているけれど「初めて読んだときはふーん、で終わってたと思う。でもいま読み返すとこんなに面白い作品だったのかと興奮できる。それが楽しい」、それがよく分かります。初見が若ければ若いころの作品ほど、そうなりやすい。当たり前かもしれないけれど。


『残された文字』井上雅彦
これはもうやられたの一言に尽きます。
空気ががらりと変わって、ホッとした次の瞬間に引き戻されるこのぞくっとした感じ。
耳元に轟々と吹雪が響き渡っていく様に感じさせる最後が秀逸です。


『新透明人間』ディクスン・カー
これ有栖川氏とまったく同じ感想を抱いた。「何だこの除き魔、紳士気取りやがって変態」みたいな!(笑


『ヨギ ガンジーの予言』泡坂妻夫
この人の作品読もう、と思いました。
直感的にこの人騙されてる、早く家にお帰り!とまでは思うんですが、多分それってわざとなのかも。綾辻氏と有栖川氏が手品の話題をしているからそう思うのかもしれないんですが、まさしく手品を見ている時の感覚だったので。騙されているのは分かる、あの予言がインチキだとも思う、でもどうやって書いたんだろう、鍵の付いた箪笥に入っているのに、という謎に悶々とする。
悶々とはしているけれど話を読むにつれ自分の直感が当たっていてちょっとほっとして、そのホッとした気分で種明かしを読んで「なるほど、こういう手があるのか!」と手を叩く。種を明かすのは手品的ではないけれど、でもやっぱり手品的なんだよなー。楽しかったです。


ちなみに、二人の手品談義では綾辻氏に同意。手品って自分で「どうやって仕掛けてるんだろう」と考えるのは楽しいけれど、種明かしをする趣向(一時期とても流行ってた)は好きじゃないです。手品はあまり深く考えずに不思議な現象を不思議だなーって楽しむのが一等好きです。
有栖川氏のいかにも理詰めな楽しみ方は、可愛いですよね。何となくアリスもむきになって考えてそうだとふと思った。
可愛いといえば、このおじさま二人のトークがところどころ可愛くて、短編の合間の清涼剤になっています。綾辻氏の方がお兄さん的ですよね。熱が入って関西弁で話し出す有栖川氏をきっと優しい目で見ている事だろう、というか私が有栖川氏にぽかぽかします。