読書の秋

北村薫ベッキーさんシリーズを読み始めました。今迄の探偵と私、とは少し違うベッキーさんと私、の関係性が面白いです。
今は『破璃の天』を読んでるんですが、英子から見て能天気であまり賢くない雅吉兄さんの言う事が時々ぞっとするほど当時の現実を意識させる内容で、そういう時とか英子がまだ15という事を改めて意識させられます。時代背景を考えると、あまりほのぼのとは言えない話も多いし。


三浦しをんの『仏果を得ず』は『光』の後に読んで正解。というか、『光』がとにかく重くて暗くて気持ちが悪くて、でも光を感じずにはいられない不思議な読後感の話だったので、バランスをとるために読みました。

『光』を読んでつくづく三浦しをんの観察力に脱帽した。作中に出てくるとある絶望が、この話の全体に流れているもののひとつなのだけれど、それがもう、本当に絶望としか言いようのないそれで、それを的確に言葉に表現してしまう表現力にも脱帽。そしてその絶望を知りながら信之に執着を見せる輔の弱さと愛と、その絶望が自分に向けられている事に気付けないという別の絶望を抱えた信之の愚かさと強さが、混沌として、でもそれもそれぞれ光が消えない限り解決しようがないのでは。
手に入るとか、入らないとか、そういうものではなくて、もうそこに自分にとっての光がある限りどうしようもなく惹かれる、心を奪われる。

という『光』からバランスをとりたくて間をおかずに手に取った『仏果に得ず』はとにかくポジティブでさらりと読めました。素直に面白かったって思える。