年度まとめとかしてみる

年末に振り返ってみたかったけどできなかったので年度に覚えてる限りしてみようかなーとか。
印象に残った本をいくつか。


小説編
夏期限定トロピカルパフェ事件』『秋期限定栗きんとん事件(上下)』
米澤穂信

『春期限定〜』の時はいまいち小山内さんと小鳩君がいまいち興味を惹かれなかったのだけれど、『夏期限定〜』から一気に面白くなってきたシリーズの2作目と3作目。特に2冊目の最後がそれまで感じていた小山内さんと小鳩君の温度差や、微妙なすれ違いがあらわになるという展開で、それがまたすごい吸引力で読ませてくれるので続きが気になって仕方なかったです。
そしてそのお互いの違いを受け入れられずに終わったあとの『秋期〜』で、つい自分がまともだったように思っていたけれどまだ全然変われてないじゃないか、というところでやっぱり二人で共闘していこうか、という着地をしていて、それもまた決して恋だとか熱い友情だとかではない、という二人の相変わらずな会話で閉じられるのがなんとも良い。『冬期〜』で二人がどういう風に進んでいくのかが楽しみです。
それからミステリーとしてもとってもいい謎がいい感じに散りばめられています。日常に些細な謎を見つけては解きたくなって、それを披露したくなってしまう、という小鳩君の「悪い癖」が話の合間合間に細かい謎を散りばめてくれるし、大筋の事件も派手ではないけれど堅実なトリックで好きです。



『光』
三浦しをん

この人の文章力と言えばいいのか、とにかく文章の持つ力がすごい。人を惹きつける文章でありながら、さらりと読ませてくれるので、話の序盤から最後まですいすいと読めてしまう。好みはあるのだろうけれど、私にとってはすごく馴染みが良いです。
話は重めのテーマか、またはちょっと変わった職業の主人公がドタバタしながらそれでも笑ってる系のものが多いと思うんですが、『光』は久しぶりの前者。文章は端正で美しいとすら思えるのに、登場人物の人間臭さや、「らしさ」っぷりが溢れ出ていて、相変わらず不思議なバランス。作中で信之の語る「愛することによるある絶望」を自覚しながらも愛する事を止められない輔と、自覚さえできないまま愛する事を中断させられた信之の対比が残酷で、けれどそれでも二人は光を求めてしまうという。かたや女性陣はそうしたものに振り回されない事を否応なしに体得していくというのも何とも。
ちなみに輔の成長後の変貌ぶりで一番驚かされたのが圧倒的な色気なのだけれど、これは著者の趣味っぽい、ともちょっと思った。気が合うな。



『ニッポン硬貨の謎』
北村薫

いわゆる新本格の一人だけれど、あまりそう感じさせないのは謎と物語の融合があまりに綺麗だからではないかと考えています。『破璃の天』と迷ったけれど、エラリーの単純なパスティーシュだけにとどまらず、翻訳物らしさまで追求して、更に魅力的な謎と論理的解決が見事にはまっているという素晴らしさでこちら。
相変わらず「探偵と助手」の使い方が巧み。



マンガ編
『オトコの一生』(オトコの漢字が出てこなかった)
西炯子

30半ばの能力はあるのに振り回される恋愛しかできない主人公と、頑なな中年男性(60近い)の不器用な恋愛物語、と言ってしまえばそれまでなんだけれど、登場人物が魅力的で、皆いいところも、いやなところもそれぞれにあってそれでも尚、魅力的な人々のドラマでもある。
若い恋愛のような恋愛を中心にばっかりはできない二人の、けれど時に熱いやり取りには憧れのようなものさえ感じます。



『さよならキャラバン』
草間さかえ

とっても好きな作家です。西炯子草間さかえもflower連載と言うのは(西炯子は昔からだけど)、私の年齢が上がったからなのか、雑誌の購買対象が少し変わったのか、まあ多分前者が大きいのだけれど。
この人の、ちょっと変わった人と、それに振り回される普通の人、という組み合わせが面白くて仕方ないです。あと眼鏡ね!眼鏡とオジサンならこの人!というぐらい良い人を描いてくれるのです。



青の祓魔師
加藤和恵

絵柄がとにかく好みで、1巻の表紙の青がとても綺麗で読み始めた作品。話としては、割と王道な感じなのだけれど、とにかく絵の細部が細かくてそれだけでも割と満足。あと兄弟に弱いので、それもまたいい感じ。



今年度は久しぶりに本をがつがつ読めた気がするなぁ。特に小説。それから小説もマンガも、元々の好み以外の新たな自分の好みと言うか、面白いと感じるもの、を発見できて楽しかった。相変わらずミステリーに偏りやすくはあるけれど。